妊娠中の口腔内の変化について|元町歯科診療所のコラム

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コラム

妊娠中の口腔内の変化について

今回は妊娠中の女性に特有の口腔内の変化について説明します.妊娠時に問題となる口腔内の疾患はやはりう蝕と歯周病が代表です.それぞれをわけて解説します.

 

う蝕について

妊娠時はう蝕の発症,再発リスクが増大します.主な原因として,妊娠によるライフスタイルの変化がう蝕発症のリスクを高めるといわれます.つわりによる口腔清掃の低下と糖質摂取頻度増による歯垢の増加,酸性食品摂取頻度の増加や唾液の酸性化などにより,口腔内の酸性環境を形成し,歯質は絶えず脱灰状態となり,う蝕が進行しやすくなります.また,母親にう蝕が多いと,生まれてくる子どもにもう蝕が多くなるという報告もあります.

 

歯周病について

歯周組織は女性ホルモンの分泌亢進により炎症をおこしやすく,歯周病進行のリスクも高まります.詳しくは,妊娠24週以降は女性ホルモンであるエストロゲンは正常時の約300倍,プロゲステロンは約10倍に上昇します.その結果,血管透過性が亢進し,結果的に 歯肉の腫脹,浮腫を伴う炎症をおこすといわれます.また,歯肉溝浸出液に混入したこれらのホルモンが,歯周病菌の発育を促進し,炎症が促進されるためです.

 さらに近年,歯周病による炎症性サイトカインの産生,プロスタグランジン合成が子宮の収縮をきたすため,早産,低体重児出産のリスクの上昇がするといわれます.Offenbacherらによれば,歯周病は低体重児出産の明らかなリスクファクターであり,そのオッズ比は7.9であったと報告しています.( J Periodontol 67: 1103-1113, 1996.)

 

家庭だけで口腔内をよい状態を保つのは難しいことです.また,妊娠中は投薬や処置も限られてきますので,早め早めの受診をお薦めします.

また,当院を含め,鳥栖三養基歯科医師会の加入医療機関では無料の妊婦歯科健康診査をおこなっていますので,是非そちらも利用されてください.(ただし,精密検査及び治療は健診日と同じ日に行うことはできません.詳しくは鳥栖市のHPをご覧ください)