親知らずの抜歯について②|元町歯科診療所のコラム

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コラム

親知らずの抜歯について②

親知らずの抜歯について②

前回,親知らずの抜歯について説明しましたが,今回は1回で抜くのが難しい場合の対応について説明します.

親知らずの根尖と下顎管といわれる神経,血管が走行している管までの距離は,日本人の場合,平均2.7mmといわれています.深く埋まっている場合はそれだけ,神経との距離が近くなり,抜歯後に麻痺や違和感などの不快症状がでる可能性が高くなります.

特に神経と接している確率が高いケースとして,①下顎智歯萠出スペースがない,②深部埋伏している,③白線(下顎管)と深く交わっている,④白線が不明瞭,⑤歯根膜腔の不明瞭化がみられる,⑥下顎管の屈曲が認められるなどの所見が術前のX線検査で確認されます.また,このような場合はCTの検査をおこない,より慎重に術前の検査をおこなうこともあります.

神経麻痺は大変不快な症状ですし,長く症状が続いて完全に回復しきれないこともあります.麻痺を避けるためには術前の的確な診査診断,術中の愛護的な操作などが重要になりますが,2回法抜歯やCoronectomy(コロネクトミー)といわれる方法も選択肢になります.

2回法抜歯とは文字通り,2回にわけて抜歯をおこなう方法です.

手順として

1回目処置:萠出の障害となっている智歯歯冠部を削除.デンタルX線写真にて削除されているかを確認.

約3か月待機し,パノラマX線写真にて歯の移動を確認

2回目処置:通法どおり抜歯をおこなう

という流れになります.

2回法抜歯の利点・欠点として

利点

●1回の処置時間が短い

●知覚異常出現を抑制する可能性がある

●2回目処置時の抜歯が容易な場合が多い

欠点

●同一部位を2回治療しなければならない

●治療期間が長い

●歯髄炎をおこしたり,感染を引き起こす可能性がある

●必ずしも知覚異常を回避できるわけではない

という点があげられます.鹿児島大学の研究では3か月で1mm以上の歯の移動を確認した割合は85.7%と報告しており,有効な方法の1つもといえます.

もう一つのCoronectomy(歯冠除去術)とは,親知らず抜歯に伴う神経損傷を回避するため,歯冠部を除去し歯根部を骨内に残存させる方法です.原則として歯根の摘出は行いませんが,術後の経過により歯根の摘出を必要とする場合もあります.1990年代より欧米諸国で臨床応用されている方法です.

個人的には意図的に抜かないのか,抜けないのかはわかりませんが,抜けなかったというのは事実ですので,口腔外科医としてはあまり選択したくない方法ではありますが...