出てこない犬歯(埋伏犬歯)は要注意
2014年4月に毎日新聞でも報道されましたが,正常にはえてこない犬歯(埋伏犬歯)の問題を取り上げます.まず記事の内容ですが,以下に記載します.
上あごの犬歯が正常に生えないことが原因で,隣の前歯が歯根がなくなったり抜けたりするケースがあることが,日本臨床矯正歯科医会の調査で明らかになった.現代人のあごが小さくなったことで,歯が生えるスペースが狭くなり,歯同士が異常に近接する場合があるためだ.同会は「小学校低学年ごろにエックス線診断をしてほしい」と呼びかけている.
●10,11歳が最多
同会が3月,発表した.会員の矯正歯科医約400人のうち30人から,8~26歳の患者のエックス線写真を診療時期を限らず集め,犬歯の異常が前歯に影響した症例110件を分析した.上あごの犬歯が本来生える10~12歳ごろを過ぎても生えなかったり,傾いて生えたりしており,その結果,上の前歯の歯根がなくなったり,なくなりかけたりしていたという.
こうした症例は女性が男性の1.9倍に上り,男女とも10,11歳が最多だった.
なぜ、犬歯の異常が歯根に影響するのか.
同会学術担当理事の稲毛滋自矯正歯科医師は,歯の中の「破歯細胞」 の作用を指摘する.この細胞は,歯の表面に張り付いて酸を出して歯を溶かし,乳歯が抜けやすくなるよう助ける働きがある.しかし,犬歯が正常に生えず歯茎に埋まったりしたままだと歯茎内で細胞が隣の歯根に密着し,溶かしてしまうという...(2014年4月27日 毎日新聞社配信の抜粋)
当院でもここ最近2名ほど同じような患者さんがおられました.お一人は残念ながら隣の永久歯の歯根吸収がひどく,患者さん,矯正歯科の丸山先生とも3者で検討しましたが,最終的に犬歯の隣の歯を抜歯しないといけない状態になってしました.せめて年に1回でも定期的にX線パノラマ撮影をおこなっていたのであれば,早期に何らかの手をうつことで永久はを抜歯せず済んだのではとおもわれるケースでした.
東京歯科大学矯正歯科学講座 末石研二教授の論文によると犬歯埋伏を認めた者のうち,32%が隣在歯の歯根吸収を有していたという報告もあり,不正咬合を呈する場合,注意が必要であると述べています.さらに 日本人小児の犬歯萌出時期は女児で10歳2ヵ月,男児で10歳10ヵ月であると報告されており,患児の永久歯交換状況にもよるが,この年齢に至っても永久犬歯が萌出せず,乳犬歯に動揺がなく,唇側に犬歯の膨隆を触診できない場合,犬歯の口蓋側転位,異所萌出を疑い,エックス線検査を考慮すべきである と述べられています.